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神輿

お前 どこ行く大原まちへ
    はだかまつりの 便り来た
小浜 恋いしゃ八幡様よ
    森が見えます ほのぼのと
私しゃ 大原荒波育ち
     と言うて鰯の 子ではない
雲に 隠れたあの月さえも
    おどりみたさに 顔を出す
どうせ こうなりゃ二足のわらじ
     共にはいたり はかせたり
思い 出したら又来ておくれ
    椿花咲く 大原へ
沖の かもめに潮時聞けば
    私しゃ飛ぶ鳥 波に聞け
三十 五反の帆をまきあげて
    行くよ仙台 石の巻
俺と 行かねか九十九里浜へ
    かぐら地引の 綱引きに
小浜 港にどんと打つ波は
    可愛あの娘の 度胸さだめ
おせや おせおせ二丁呂でおせや
     おせば港が 近くなる
高い 所が望みならば
    足下大事に お静かに
遠く 離れて逢いたい時は
    月が鏡に なればいい
船は 千来る万来る中で
    私の待つ船 まだ見えぬ
秋の 祭りにゃ嫁子も連れて
    飛んでおいでよ お囃子に
小浜 八幡様赤いもんが好きだ
    染めてあげましょ花染めに
踊る 黒潮八幡岬
    波のしぶきの 花もよう
幟 はためく社の森に
   孫に急かされて 宮参り
にしら 知らぬなおらが鳥ゃチャボだ
     チャボが二度鳴きゃ 夜が明ける
浜の 姉御はおしろいいらぬ
    銀のうろこで 肌光る
泣いて くれるな出船の時は
     沖でろかいが 手につかぬ
男 だてならあの利根川の
   水の流れを 止めてみな
可愛い 男と一晩寝れば
      声もよくなる 背も育つ
めでた めでたが三つ四つ五つ
     扇めでたが すえひらく
小浜 横浦に一度はおいで
    根のない桜に 花が咲く
船は 出て行くかもめは帰る
    波に磯打つ 日は暮れる
送り ましょかよ送られましょか
    せめてあなたの そばまでも
その声で とかげ喰うかよ山ホトトギス
       人は見かけに よらぬもの
一度 来て見た大原祭り
    私も若けりゃ 嫁に行く
小浜 港は遠浅なれど
    なぜかとしまが 色ぶかい
小浜 出る時きゃ涙で出たが
    塩田川をば うたでこす
小浜 港にかすみがかかる
    妾お前が 気にかかる
よせば よいのにしたきり雀
     ちょいとなめたが 身の定
切れた 切れたとひとめにばかり
      水に浮き草 根は切れぬ
今年は 豊年穂に穂がさいて
      道の小草に 米がなる
国を 離れて聞く笛太鼓
    そぞろ身にしむ 旅の風
咲いた 桜になぜ駒つなぐ
     駒がいさめば 花が散る
色で 身を売る西瓜でさえも
    中にゃ苦労の 種がある
山の あけびは何見て割れる
    下の松茸見て 割れる
浅い けれども硯の水は
    細くたのしむ 筆の先
丸い 玉子も切りよで四角
    物も言いよで 角がたつ
赤は 八幡しぼりは廣田
    汐でぬれてか 唄で行く
惚れて 通えば千里も一里
      逢わずに帰れば 又千里
宮に たどりて神輿が舞えば
    東のお空も ほのぼのと
常は 控えめ亭主を立てて
    やりくり上手の 唄上手
男 度胸と桜の花は
   咲くも花なら 散るも華
神輿 かぞえりゃ十と八社
    これではやさにゃ 名がすたる
風に 明かりを消させておいて
    忍び込むのは 窓の月
川の 流れよ塩田の浦に
    真実一路の 物語り
最上 山から大原見れば
    祭りばやしに 人の波
着いた ばかりですぐ出る舟は
     逢へて話は 後や先
そろた そろたよ踊りがそろた
     秋の出穂より 良くそろた
小浜 よいとこ一度はおいで
    根のない桜に 花が咲く
竹の 切り口たまりし水は
    すまずにごらず 情心
嫁も 迎えた孫子も出来た
    後はこの子と はやすだけ
姉と 妹にむらさき着せて
    どちらが姉やら 妹やら
いやな ものならなぜあのときに
     かわいい私を まよわせた
器量 人並みとりえもないが
    孫をでかした 大手柄
小浜 港に来てみやしゃんせ
    根のない桜に 花が咲く
大工 さんよりこびきがにくい
    中のよい木を ひきわける
つねりゃ 紫くいつきゃ紅よ
      色で仕上げた この体
あえば さほどの話も無いが
     あわねば苦労で眠られぬ
暮れる 水面に灯りが揺れる
     旅の一夜の 窓の雨

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